低予算で「映画宣伝」に辿り着くまでの話。

「低予算」というよりも、皆様ご存じの通り我々は「ノー予算」なケースが大変多いのですが、それでも不幸中の幸い、器用貧乏というスペックが功を奏して今のところは様々な宣伝物の制作や宣伝活動(の、ようなもの)を自分なりに進めさせてもらっている、というのが現状です。

とはいえ、手を動かすのも自分、指示を出すのも自分なので、尋常じゃないリソース不足であるというのが喫緊の課題でもあります…。


さて。

今日は、今作が達成できているかどうかはさておき、一般的(?)に「映画宣伝ってこういう流れ」というものを以下に書き出してみます。

(ただし、亀山は映画宣伝の専門家ではないので、ワードチョイスの多少の誤差はご容赦ください。)


映画の「宣伝物」とは。


1)予告編

2)メインビジュアル

3)ポスター

4)チラシ

5)WEBサイト

6)SNSアカウント

… etc.


この辺りは、映画宣伝に関わりのない方でもパッと思いつくものかなと思います。特に、1予告編や2メインビジュアルなんかは、「情報解禁」と呼ばれるものと同時に発表されることもありまして、作品によりけりですがこれらが概ね公開日の3ヶ月前までには世に出ていることが望ましいとされているようです。大作映画などは、もっと早く、半年前あたりから予告編(特報?)を見かけることもありますよね。

SNSアカウントは近年マストの宣伝アイテムだと思いますが、これの活用方法は作品によって様々で、SNSの使い方も熱の入れ方も、作品ごとにバラバラだな~という印象がまだまだわたくしとしても強いです。

『12ヶ月のカイ』は…、皆様にはどう見えているでしょうか…?


で、これらの宣伝物をどういったデザインや方向性で作っていくか、というのを考え始めることが「映画宣伝」の出発点のひとつともいえると思います。


「映画宣伝」はいつから始まるのか。


考え方のひとつとして、「映画宣伝は映画を企画した瞬間から始まっている」というパターンもあります。

映画そのものがどんなものであるか、誰に見せたいものであるかは、そのまま劇場公開時の宣伝にも影響を与えるものなので、本当であれば映画が作られる前から宣伝についても考えられるべき、なのです。

が、現実問題、映画作りと並行してそれを考えられる制作体勢がインディペンデント映画にあるのかと問われると、あまり無い場合が多いのかもしれません。


『12ヶ月のカイ』の場合は、お恥ずかしながら『世界で戦うフィルムたち』でも触れている通り、制作中の自分にとっても『12ヶ月のカイ』が表すものが何なのか把握しないまま制作を進めていたので、今作の映画宣伝についてのキーワードや方向性を得たのは、海外で映画祭を回っていく過程のことでした。

SF映画なのか、恋愛映画なのか、ヒューマンドラマなのか、サスペンスなのか。

メインジャンルを何と捉えるかによっても宣伝の方向性は変わってきますし、観客のターゲットも変わってきます。


人によってはもちろん、宣伝やデザインについて考えることが得意で、映画作りにもそれを反映させたい!という方もおられると思いますが、やはり「映画制作」そのもののウェイトがとても重いので、なかなか同時並行で宣伝のことについて考えるのは難しいのが現状です。

物理的にも、金銭的にも…。


金銭的に、と書きましたが、『12ヶ月のカイ』の場合はほとんどの宣伝物を亀山が制作しています。メインビジュアルのイラスト部分のみ、監督仲間でありイラストレーターでもある河内さんに依頼させていただきましたが、それ以外の部分についてはやはりどうしても経費的な面から自分で作らざるを得ないのです。

幸いにも、かつてWEBデザインの仕事を3年ほど経験していたお陰で、ある程度のデザインやWEBの知識はすでにあり、自分で制作も出来るのですが、よくよく考えると果たして監督が自ら手を動かしてしまってよいのか(=これに監督が時間を割いてしまってよいのか)といったところは、ちょっと前向きな回答が出来ないかもしれません。


本来、監督がコミットするべき映画宣伝は、もっと他にあるはず、と自分でも思っています。

が、それを実現し得ないのが現状の貧弱なインディペンデント映画の環境であることも間違いありません。

どうにかならんものか。

「次の作品こそは…」という思いを毎回抱きながら、結局今度も、この泥沼から抜け出せないのです。

どうにかならんものか。



亀山睦木

映画『12ヶ月のカイ』公式サイト

7月22日(土)より池袋シネマ・ロサにて2週間限定公開|監督:亀山睦木|W主演:中垣内彩加、工藤孝生|人間とヒューマノイドが生み出した、"在るはずのないモノ"をめぐるSFサスペンス